「夫の物は誰の物?」

 法テラスに来る法律相談で,多いのが離婚問題です。
 離婚にまつわる法律相談をしていて気づくのは,「夫婦のどちらかが稼いできたお金でも,結婚している以上は,夫婦の共有となる」と勘違いされている方が意外と多いということです。
 しかし,夫婦間であっても名義がはっきりしている物やお金については,その稼いだ人の物です。たとえば,会社員Aさん(夫)と専業主婦Bさん(妻)の夫妻において,Aさんが稼いできた給料を,Aさん名義の口座に入れてあるとします。そうすると,そのお金は,全てAさんの単独所有ということになり,共有ではないのです。
 ただ,いざ離婚するという場合,Bさんとしては納得いかないですよね。Bさんとしては,「私が家事をやってきたからこそ,Aさんはバリバリ働けたはず。ということは,Aさんの給料の一部は,私が間接的に稼いできたものではないか」と言いたくなります。
 そのために,法律は,離婚の際に,「財産分与」という制度を準備しています。つまり,今までの夫婦生活を考慮して,Aさんは,Bさんに財産の一部を分与しなければならないのです。
 しかし,逆にいえば,財産分与を経ない限りは,Aさんの口座のお金は,あくまでAさんのものということになります。
 ですから,財産分与を経ないで,Bさんが,勝手にAさんの口座からお金を下ろすと,法的には,他人のお金を取ったのと同じことになり,非常に揉めてしまいます。
 このように,夫婦といえども,財産は別であるということを,是非,知っておいてください。