NHKに受信料は支払わなければいけないのか。

1 法律相談でなぜテレビを設置したらNHKを見ていなくても受信料を支払わなければいけないのかという相談をされることがあります。
2 NHKの受信料に関しては放送法という法律で定められています。この法律によると,テレビ受信機を設置した者はNHKと受信料を支払う内容の受信契約を締結「しなければならない」と規定されています(放送法64条1項)。
3 平成25年6月に横浜地裁相模支部は,放送法64条の解釈として,テレビを設置すれば当然に受信契約が成立するのではなく,正当な理由なく受信契約締結を拒む場合には,「契約締結を承諾せよ」との意思表示を求める判決(民法414条2項但書)を得ることで受信契約が成立するとの判断(判決)を示しました。
 この判決は条文を素直に解釈したものであり,解釈論としては,「正当な理由」があれば受信契約を拒めると述べていることから,なにが「正当な理由」に当たるかという点に集中すると思います。
4 「正当な理由」の主張として,契約締結義務を認める放送法は,「契約自由の原則」に反するという主張があると思いますが,この主張は個人的にはなかなか難しいだろうと思います。
(1)まず,テレビを買うかどうかは自由なのですから,受信料を支払いたくなければテレビを買わないという自由があるため,契約自由には反していないことになります。
(2)また,契約自由の原則と言えども無制限に自由ではなく,必要かつ合理的な制約に服します。
NHKは公共放送として重要な役割があること,放送料金は総務大臣の認可が必要であり(放送法64条3項)適正な金額に抑えられていることから契約自由に対する必要かつ合理的な制約であると判断されるでしょう。
5 「正当な理由」のハードルは相当高いと思われますので,素直に受信料を支払った方が賢明だと個人的には思います。