「自炊」

 「自炊」の話をしたいと思いますが、「自炊」と言っても食事を自分で作る話ではありません。
 所有している本をスキャナー等で電子データ化することも「自炊」と呼ばれています。最近、スキャナーを購入したので(購入しただけで、まだ自宅に届いていませんが)、「自炊」についてお話をしたいと思います。

 まず、「自炊」行為自体の合法性を考えるに、著作権法21条は「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」として、複製権が著作者に帰属することを定めています。一方、著作権法30条において、「著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。」として、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的」とする場合には、特別に複製することが認められています。
 よって、「自炊」行為自体は、合法であると考えられています。
 
 次に、良く利用される「自炊」の方法としては、以下の3つが挙げられます。
1、本の所有者が、自分の所有するスキャン機材を用いて、自分でスキャンする
2、本の所有者が、本を持参して業者の店舗に赴き、業者が所有するスキャン機材を利用してスキャンする
3、本の所有者が、本を業者に送付し、業者が所有するスキャン機材を用いてスキャン。その後、電子データが本の所有者に送付される(自炊代行)

 1,2は、合法だと考えられていますが、3については、裁判で合法性が争われました。
 簡単に結論だけ述べると、所有者に頼まれたとしても、複製をしているのは業者であり、私的複製の範囲外であるから違法であると判断されました。

 この判決以降、いわゆる「自炊」代行業者は、かなり減ったのですが、「業者がスキャンするが、本は業者が廃棄する」などの方法で事実上「自炊」代行を続けている業者もあるようです。(判決理由からするに、違法と判断される可能性はあると思いますが・・・)
 
 何にせよ、業者に自炊を依頼することは、違法行為と判断される可能性が高いため、手を出さないことが賢明かと思われます。
 よって、「自宅の本の処分に困っているが、できるだけ残しておきたい、また、直ぐにPC等で検索できるようにしたい等」と考える人は、自分で「自炊」を行うことをオススメします。
 その場合には、本を裁断することが前提になりますが、コピー等もできる複合機ではなく、自動給紙方式及び両面読取機能が搭載されたスキャナー専用機を購入した方が良いでしょう。一枚一枚スキャンするのは、手間ですし、データ化の作業も煩雑になります。
 ちなみに、本を裁断せずとも、スキャナーを容易に行うことができる専用機もありますので、どうしても原本を残したいという方は検討してみると良いかもしれません。