養育費について

 以前婚姻費用について書いたので、今回は養育費について。

 養育費とは、未成熟子が生活するために必要な費用をいいます。
 民法877条1項は、直系血族の扶養義務を定めており、親は、直系卑属である子供に対して扶養義務を負っているので、養育費を負担すべき義務があります。この義務は、親であることから生じる義務であり、その親が子供の親権者であるかどうかは関係ありません。
 なお、ここでいう扶養義務は、婚姻費用と同じく、生活保持義務と考えられています。つまり、義務者は、子供に対し、義務者と同程度の生活を保持させる必要があります。

 具体的に、どのように養育費の分担を決めるかというと、婚姻費用と同じく、まずは、夫婦(又は元夫婦)で協議(話合い)して決めるのが原則です。
 協議することができなかったり、協議がまとまらなかった場合に、家庭裁判所が審判によって定めたり、調停の申立てをすることができるのも婚姻費用と同じです。
 さらに、家庭裁判所においては「算定表」に基づいて養育費の分担額が定められることになるのも婚姻費用と同じです。

 では、親はいつまで子供の養育費を負担しなければならないのでしょうか。
通常、成人に達した者は、働くなどして自分で生計を立てることができます。したがって、養育費の分担義務は、原則として、子供が成人に達するまでです。
ただし、最初に養育費とは、「未成熟子」が生活するために必要な費用といったように、必ずしも「未成年」とイコールではありません。未成熟子とは、経済的に独立して自分の生活費を自ら得ることができない子のことをいいます。ですので、例えば子供が大学に通い、勉強しているために働くことができないという場合には、経済的に独立しているということができないので、子供が大学を卒業するまでは養育費の分担義務が続くと考えることができます。なお、この場合、終期を単に「卒業するまで」と定めると、子供が留年等した場合に、争いが生じる可能性があるので、例えば「22歳に達する後に到来する3月末日まで」などと明確にしておくことをおすすめします。

さて、養育費は一度定めたとしても、その後支払われなくなるということも多いです。そのような場合、決めた内容を公正証書にしていなければ、調停や審判、訴訟を起こす必要があります。
養育費を調停や審判で定めてあった場合には、第1に、履行勧告という方法があります。これは、家庭裁判所が調停で定められた義務がきちんと履行されているか調査し、必要に応じて相手方に履行するように勧告する制度です。ただし、この履行勧告には強制力はありません。
第2に、履行命令という方法もあります。これは、家庭裁判所が、養育費等の金銭の支払その他の財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った者に対し、相当の期限を定めてその義務を履行すべきことを命ずる審判をします。その結果、履行命令によって義務の履行が命ぜられたにもかかわらず、正当な理由なくその命令に従わないときには、10万円以下の過料に処することができます。
第3に、もっとも強力な方法として、強制執行があります。これは、相手方の財産から強制的に回収する方法です。

養育費は、親の義務であるとともに、子供の権利でもあり、子供が生活するために必要なものです。養育費について協議するときには、子供のことを第一に考え、一度決めたのであれば、子供のために、しっかりと払い続けて欲しいものです。