財産分与の基準時

1 離婚に際して,ほとんどの場合,財産分与が行われます。
 財産分与とは,夫婦の婚姻期間中に夫婦の協力で形成・維持された財産は名義の如何を問わず共有財産であるといえることから,離婚に際して精算をする手続です(離婚後の扶養や慰謝料を考慮する説もあります。)。
2 財産分与に際して,夫(妻)名義で不動産や預金があることがありますが,価値や残高に変動がある場合,どの時点の価値や残高を基準にすればよいのでしょうか。
3 離婚の効力が過去にはさかのぼらないことから,原則として,離婚時(裁判離婚の場合は口頭弁論終結時)の価値や残高とするのが原則です。
 しかし,不幸な家庭にはそれぞれ不幸な形があるというように,長年別居が続いた夫婦や,離婚がスムーズに行かず長引いてしまった場合も往々にしてありますが,その際の価値や残高の基準時が問題になります。
4 別居が続いた場合,別居したことにより夫婦の協力が終了したとして,別居時を基準とする扱いが一般的です。
離婚の手続が長引いてしまった場合は,一般的には離婚時(口頭弁論終結時)とする扱いが多いようですが,手続き中の夫婦関係や,対象財産に価値の大きな変動が生じたケースでは,事情に応じて柔軟に判断がなされるようです。
5 弁護士に離婚の相談をされる際は,財産分与対象財産の価値を決める基準時が問題となることを意識して,古い預金通帳などを用意していただけると実りある相談になると思います。